引っ越しや新居を購入した際、テレビを観るには新たなアンテナを購入しなければならない場合があります。
しかし、アンテナにはいくつかの種類があり、生活環境や用途などによって適切なものを選ばなければいけません。
また、種類やメーカーごとにデザインや性能、費用などが異なるので、自分にぴったりのアンテナを見極める知識も必要になるでしょう。
そこで、ここでは一般的で普及率も高い「八木式アンテナ」と、外観がスマートな「デザインアンテナ」について詳しく解説していきます。
八木式アンテナとはどんなアンテナ?選ぶ際のポイント
八木式アンテナとは、アナログテレビの時代から日本で広く普及していたアンテナです。
魚の骨のような形が印象的で、地デジテレビに移行したあとも多くの家庭で利用されています。
八木・宇田アンテナとも呼ばれ、アナログテレビ時代はVHFアンテナとも呼ばれていました。
地デジテレビ移行後は、UHFアンテナという別名で呼ばれることもあります。
放射器(ラジエーター)、反射器(リフレクター)、導波器(ディレクター)が前後に配置されている構造で、基本的に素子(エレメント)が多いほど感度が高くなるのが特徴です。
テレビ以外にも、FM・AMラジオ、アマチュア・軍用無線など、幅広い分野で利用されています。
八木式アンテナを選ぶときにポイントとなるのは、「物理チャンネル」「偏波面」「動作利得」の3点です。
物理チャンネルとは、送信局から送られてくる地デジ電波に割り当てられたチャンネルを指します(テレビリモコンのチャンネルとは別)。
アンテナを選ぶ際は、自分が住んでいる地域の物理チャンネルに対応したものを選ぶ必要があります。
また、地デジ放送では中継局ごとに異なる偏波面が使われています。アンテナを取りつけるときは、必ず受信電波の偏波に合わせなければいけません。
動作利得は、アンテナの感度のことです。
住んでいる地域によって送られてくる電波の強さが違うので、最適な感度のアンテナを選びましょう。
八木式アンテナのメリットとデメリット
メリット
八木式アンテナの大きなメリットは、テレビ電波を受信しやすいという点です。
アンテナ自体の受信性能が高いので、テレビ視聴が安定しやすくなります。
たとえば、テレビ電波が弱い地域であっても、その受信性能の高さからブースターを設置しなくてもテレビが映る可能性が高いでしょう。
同様の理由で、電波が届きにくい地方局の放送であっても受信しやすくなります。
また、八木式アンテナは一般的に屋上に取りつけるので、環境的にも電波の受信に有利です。
さらに、比較的安価で購入できるのも見逃せないメリットでしょう。故障による修理や交換を考えた場合も、コストを抑えることが可能です。
デメリット
一方、デメリットとしては景観を損ねる可能性があるという点が挙げられます。
魚の骨のような見た目が建物のイメージに合わなかったり、周囲の景色の邪魔になったりすることがあるでしょう。
それから、基本的に屋上部へ設置するという性質上、風や雨などの影響を受けやすくなってしまいます。
強い台風や豪雪などがあった場合、倒壊や故障が起こる危険性を考慮しなければいけません。
屋外にあるため、汚れやすいのもデメリットです。
デザインアンテナはどんなアンテナ?選ぶ際のポイント
デザインアンテナとは、従来のものよりもデザイン性を重視したアンテナのことです。
カラーリングや形状、薄さや小ささ、収納性などにこだわりつつ、アンテナとしての受信性能も備えています。
平面アンテナ、壁面アンテナ、フラットアンテナなどと呼ばれることもあります。
シンプルでスマートなデザインのため、建物の美観を損ねることなく設置することが可能です。
デザインアンテナを選ぶ際は、八木式アンテナと同じく「物理チャンネル」「偏波面」「動作利得」の3点に注意しなければいけません。
また、カラーリングや形状、サイズなどにいろいろな種類があるので、どんな場所にどういったデザインアンテナを設置したいのか、よく検討する必要があるでしょう。
デザインアンテナのメリットとデメリット
メリット
デザインアンテナのメリットは、薄くてコンパクトなので室内に設置できるという点です。
四角形や長方形、六角形などといった多種多様なデザインの商品が用意されているため、部屋のイメージに合ったものを選ぶことができます。
カラーリングも豊富ですから、家具や壁紙などの色に合わせても良いでしょう。
耐候性も備えており、室外に設置することも可能です。
適切なデザインのものを選べば、外壁やバルコニーなどに取りつけても景観を損ねる可能性は低くなります。
屋上部以外の場所に設置できるため、天候から受ける影響が少ないのもポイントです。
デメリット
一方で、八木式アンテナに比べて受信性能が弱くなりがちというデメリットもあります。
本体の受信性能の低さに加え、室内や外壁に設置することで環境的にも電波を受信しづらいといったケースが見られます。
さらに、八木式アンテナより高価になる場合が多い点も注意しなければいけません。
故障や交換の際にも、大きなコストがかかります。
八木式アンテナとデザインアンテナの性能を徹底比較!
こちらでは、八木式アンテナとデザインアンテナの性能について、それぞれを比較しながら詳しくご紹介していきます。
①サイズや重量
こちらでは、アンテナのサイズ、重量を比較し特徴をご紹介していきます。
【八木式アンテナ】
八木式アンテナは他の地デジアンテナと比較しサイズ感があります。
一番小さいもので長さが約1m程、大きいものですと実に2.8mの長さとなります。
重量は、一番軽いもので0.85kg、一番重い物は3.2kgと約4倍の重量となります。
【デザインアンテナ】
デザインアンテナは八木式アンテナと比較すると、サイズもコンパクトで重量も軽く持ち運びやすい点が特徴で、外観を損ねることなく設置できるため、外観を気にされる方に人気となっています。
大手国内メーカーDXアンテナ「UAH201」シリーズは業界最小クラスのサイズ感で、高さ590mm×幅220mm×厚み119mmとなります。
こちらのアンテナの重量ですがアンテナ本体が1.7kg、取り付け金具を含めても2.1kgと軽量です。
②半値幅
半値幅とは、アンテナの指向性を数値に表したものです。
まっすぐ受信方向を向けたアンテナの状態から、左右にアンテナを振り何度動かすと電波の受信電力が3dB落ちるか表した数値です。
角度が狭ければ狭いほど受信方向に対しまっすぐアンテナを向けなくてはいけません。
2種類のアンテナを半値幅で比較すると以下の通りです。
【八木式アンテナ】
アンテナ型番 | 半値幅 |
UA14 | 34~57 |
UA20 | 28~52 |
UL14 | 33~55 |
【デザインアンテナ】
アンテナ型番 | 半値幅 |
UAH201 | 75~86 |
UAH261 | 71~82 |
UAH201V | 76~104 |
このように2種類のアンテナを比較すると、デザインアンテナが八木式アンテナに比べ半値幅が非常に大きくなっています。
アンテナの向きがある程度あっていれば電波を受信できることになりますが、その分ノイズや反射波などの影響を受けやすくなります。
③前後比
前後比とは、アンテナの後ろからくる電波と前から受ける電波の差を表した数値を指します。
2種類のアンテナを前後比で比較すると以下の通りです。
【八木式アンテナ】
アンテナ型番 | 半値幅 |
UA14 | 17~28 |
UA20 | 19~28 |
UL14 | 16~30 |
【デザインアンテナ】
アンテナ型番 | 半値幅 |
UAH201 | 9~18 |
UAH261 | 12~22 |
U2SWLA20 | 10~17 |
上記表のとおり、デザインアンテナの方が前後比が低い数値であることが分かります。
デザインアンテナの方が周囲から電波の影響を受けやすいと言えます。
一般的にデザインアンテナは外壁への設置が多いです。
その場合、工法に障害物があるため前後比を上げることは難しいと考えられます。
④動作利得
動作利得はアンテナの性能を比較する上で最も重要な項目と考えられます。
素子数20素子の八木式アンテナと、素子数20相当のデザインアンテナで比較します。
【八木式アンテナ】
アンテナ型番 | 半値幅 |
UA20 | 8.5~13.8dB |
UL20 | 10.1~13.5dB |
【デザインアンテナ】
アンテナ型番 | 半値幅 |
UAH201 | 7.8~9.8dB |
U2SWLA20 | 7.8~9.8dB |
上記表で示している通り、デザインアンテナよりも八木式アンテナの方が動作利得が高いことが分かります。
動作利得は、受信チャンネルによってもその差は異なりますが、ローチャンネルタイプのアンテナ以外はほぼ同じような結果となるでしょう。
⑤販売価格
最近、アンテナはホームセンターやネット通販などでも購入できます。
こちらでは、デザインアンテナと八木式アンテナの一般的な価格相場をご紹介し、その値段を比較します。
【八木式アンテナ】
一般的な相場:3,000円~1万円程度
八木式アンテナは、本体の大きさに比例し価格が高くなる傾向があります。
本体が大きければ大きいほど値段は上がりますが、その分受信性能は高まります。
【デザインアンテナ】
一般的な相場:5,000円~1万5,000円程度
デザインアンテナはサイズに対しての値段差はほぼありません。
しかし、八木式アンテナ同様、高額なものほど受信性能が高い傾向があります。
上記結果から、八木式アンテナに比べデザインアンテナの方が本体価格が高いことが分かります。
そのため、設置費用を抑えたい方は八木式アンテナを選ばれ、費用より外観への影響を優先される方はデザインアンテナを選ばれる傾向があります。
⑥耐久性
こちらでは、アンテナの耐久性について比較していきます。
アンテナの耐久性はアンテナの形状もそうですが、設置場所が大きな影響を与えます。
【八木式アンテナ】
八木式アンテナは、魚の骨のような横に伸びる骨組みだけの構造が特徴的です。
この形状は風の抵抗を最小限に抑える構造になっています。
基本的には、耐久力が強いとされています。
しかし、八木式アンテナは屋根上に設置する事が多く、その場合風を遮るものはなく直で影響を受けます。
そのため、台風などの強風の影響や飛来物によってアンテナの傾きや転倒などを招き、故障の原因となります。
八木式アンテナは天候の影響を受けやすいことから、アンテナ工事の専門業者では台風や暴風雨や潮風の影響を受けやすい沿岸部、豪雪地帯などそれぞれの地域に合わせて、アンテナを固定する屋根馬やアンテナマスト・ステーアンカーなどを活用し強度を高めています。
【デザインアンテナ】
デザインアンテナは主に建物の壁面に設置する事が多く、台風や暴風雨による影響を受けにくくなっています。
デザインアンテナの場合、八木式アンテナで例える骨の部分の素子がボックス内に収まっており耐久性も高いです。
このように、台風や豪雪地帯など自然災害の多いエリアでは、故障の原因を防ぐためにもデザインアンテナを設置することが得策と言えます。
⑦メンテナンスなどのコスト
こちらでは、アンテナのメンテナンスにかかる費用で比較してみます。
アンテナの基本的なメンテナンスコストですが、八木式アンテナ・デザインアンテナのいずれもコスト面ではすくない機器と言えます。
前述で耐久性で比較をしましたが、自然災害による故障リスクは八木式アンテナの方が少し高いことは事実です。
地域差はありますが、アンテナを設置した多くの場合は基本的なアンテナ寿命である10年はメンテナンスなしで使用されています。
自然災害などにより故障した場合にはアンテナ工事が必要ですが、毎年からなず発生する費用とは考えにくいです。
地域に合った最適なアンテナ種類を選び、最も適した場所にアンテナを設置すればメンテナンスコストがかからず長く使って頂ける可能性が高いと言えます。
八木式アンテナとデザインアンテナは結局どちらが良いの?
八木式アンテナとデザインアンテナは、それぞれコンセプトが異なり、性能的にも一長一短があります。
そのため、どちらのアンテナを選べばいいのかについては、住んでいる地域や環境などによって答えが変わります。
テレビ電波の弱い地域に住んでいる場合は八木式アンテナ、建物の景観を損ねずスマートにアンテナを設置したい場合はデザインアンテナというように、ニーズに合わせて選ぶことが重要です。
また、「屋上部のスペースに太陽光発電パネルを置きたいから、デザインアンテナを室内に設置しよう」というような選び方でも良いでしょう。
まとめ
こちらの記事では、デザインアンテナと八木式アンテナの性能について双方比較しながら徹底解せるしてきました。
いずれのアンテナにもメリット・デメリットがありますが、アンテナ工事で最も大切なことは、環境に合ったアンテナ選び最適な場所に設置することです。
優良なアンテナ専門業者であれば、電波環境などをしっかり調べた上で周辺環境や地域特性に合わせて解決策や最善策を提案してくれるでしょう。
アンテナ設置は個別の事情により変わってくるため、気になる方は「みずほアンテナ」へお気軽に問い合わせください。
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