マイホームを建てたら、アンテナを新しく取り付けないとテレビを見ることができません。
また、引っ越しを契機にアンテナを買う必要が出てくることもあるでしょう。
アンテナを購入するためカタログを見ていると、「利得」という項目があることに気づきます。
一般的には、あまり聞かない単語なので「利得ってどんなもの?」と思う人も多いのではないでしょうか。
ここでは、アンテナの利得や選び方について分かりやすく解説しています。
アンテナ利得とは
2011年に地上デジタル放送に完全移行したことで、地デジを見るにはUHFアンテナが不可欠となりました。
また、衛星放送が多様化しパラボラアンテナを利用する人も珍しくなくなっています。
「利得」とはこれらのアンテナの性能を表す指標の1つです。
アンテナが電波を受信するときの効率の良し悪しを示すもので、同じ強さの電波なら利得が大きいほどアンテナから取り出せる電波の強度が強くなり、弱い電波もキャッチできるのです。
そもそも利得とは「指向性のある」アンテナについて使われる指標です。
指向性とはアンテナの放射方向とその強さの関係のことであり、「指向性がある」ということは放射が強くなる特定の方向を持っていることを表しています。
逆に、全方向へ同じ強さの電波を放射できるのなら、それは無指向性ということです。
一番放射が強くなる方向に向いているときの電波の強さを、アンテナの利得といいます。
利得が大きいと特定の方向での感度は上がりますが、それ以外の方向では性能が大きく下がります。
そのため、放送塔が目視できるような場合で、正確にアンテナの方向を合わせられるなら利得の大きいアンテナは有効です。
しかし、放送塔が目視できない場合などでは大きな利得のアンテナでは使いにくいということもあります。
アンテナ利得の数値について
アンテナ利得を表す単位はデシベル(dB)です。
デシベルは比率の単位であり、基準となるアンテナと出力レベル比べるための基準として用いられます。
アンテナには、「基準となるアンテナ」が決められています。
例えば基準となるA社のアンテナとB製品の利得が0デシベル(dB)であったのなら、B製品は基準アンテナと同等の性能をもっていることを示します。
また、利得の数値の高さ=性能の良さ(電波の受信しやすいさ)を示しますが、性能が2倍だから利得が2倍といった計算ではありません。
デシベルは以下のような常用対数の計算式で求められています。
基準アンテナの2倍の性能=3dB 基準アンテナの4倍の性能=6dB 基準アンテナの100倍の性能=20dB |
尚、「基準となるアンテナ」には、以下2種類があります。
・ダイポールアンテナ
・アイソトロピックアンテナ
「ダイポールアンテナ」とは最もシンプルなアンテナであり、これを基準としたときの利得を相対利得といい、単位は「dBd」または単純に「dB」と表記されます。
一方、「アイソトロピックアンテナ」は、全方向に一様な電波を放出することを仮定した架空のアンテナです。
アイソトロピックアンテナを基準とした利得を絶対利得と呼び、単位は「dBi」が使われます。
ダイポールアンテナの絶対利得は2.14なので、dBdとdBiを単純に比較することはできません。
アンテナ利得は高ければ高いほどいい?
利得数値が高いアンテナほど性能は高くなりますが、アンテナ利得が高ければ高いほどいいという単純な話ではありません。
利得の高いアンテナには、以下2つの特徴があります。
・設置が難しい
・アンテナを向ける方向が限られる
これらの特徴について詳しくご紹介していきます。
設置が難しくなる理由には、「アンテナの指向性」が関係しています。
まず指向性は電波を受信できる方向のことを指しますが、指向性に関して2種類のアンテナが存在します。
①指向性アンテナ:一定の限られた方向でしか電波を受信することができない
②無指向性アンテナ:どの方向からでも電波を受信することができる
アンテナの指向性は利得と大きな繋がりがあり、利得が高ければ指向性も高まるという特徴を持ちます。
そのため、利得性が高ければ高いほど、アンテナの設置が困難になることが分かります。
電波の方向を見極めた上で設置場所を決めるだけでなく、アンテナの位置や角度なども細かく調整する必要があり、専門時な知識や技術が求められます。
もう一点、アンテナを向ける方向が限られるという特徴においては、トラブルが起きやすいというデメリットが挙げられます。
アンテナは屋外に設置することが多く、風や雨・雪などの天候の影響を受けるだけでなく、アンテナに鳥がとまるなど外的な影響も受けます。
これらの影響でアンテナの方向がズレてしまうことは少なくありません。
利得性の高いアンテナは、方向が限られるため、少しのアンテナのズレによりテレビが映らなくなってしまうこともあります。
これらの特徴から、アンテナの利得が高ければ安心という訳ではないことがお分かり頂けたと思います。
電波状況の良い地域では、利得の高いアンテナを設置することでトラブルが起きやすくなるデメリットもあります。
アンテナ方向のズレはDIYなどご自分での調整は難しく、業者への対応を依頼する必要があります。
そのため、お住まいの電波状況や周辺環境に合わせて必要な利得を持ち合わせたアンテナを選ぶ事が最も大切です。
自宅のアンテナ利得を知るには
引っ越し先などにあらかじめ設置されているアンテナの利得を知るにはどうすればよいでしょうか。
カタログや取扱説明書があれば、利得が記載されているため簡単に知ることができます。
そのような資料がないなら外側から見た形状で判断することになるでしょう。
アンテナの利得は製品によってさまざまなので、正確に知るにはアンテナの型番が必要です。
そのため、アンテナに詳しいアンテナ設置業者に確認するのが最も確実な方法です。
UHFアンテナには、魚の骨のような形をした「八木アンテナ」やコンパクトな「平面アンテナ」、「室内アンテナ」「ユニコ―ンアンテナ」といった種類があります。
広く普及している八木式アンテナの場合、素子(エレメント)と呼ばれる横棒の数で性能が変わってきます。
素子が多いほど利得は大きく指向性が高くなるのです。電波の強さは住んでいる地域によって差があり、これを電界地帯と呼んでいます。
電界地帯には強、中、弱の3つのレベルがあります。強地帯なら4~8つ程度の素子のアンテナでも充分です。
しかし、弱地帯では20~26素子が必要な場合もありますが、ブースターなどを合わせて設置することで電波の弱い地域でも他のアンテナを設置できるケースもあります。
自分の地域の電界地帯を知るには、近所のアンテナを調べるのが最も手軽な方法です。
電波の弱い地域には大きめのアンテナが目立つ一方、電波の強いエリアでは平面アンテナなども多くなります。
また、地域の電気屋などに聞いてみるのも良い方法です。
ただし、利得や電界地帯を調べるためだけに業者の有料サービスを利用するのはあまり得策ではありません。
うまく言いくるめられて法外な値段のアンテナを買わされるおそれもあるため、十分に注意しましょう。
まとめ
賢くアンテナを選ぶには、地域の電界地帯や周囲の建造物などの環境条件を考慮に入れることが大切です。
放送塔や中継塔に近く電波が強いエリアならば利得の大きなアンテナも役立ちますが、そうでないなら逆効果になることもあるのです。
それぞれの条件によって最適なアンテナが違うので、アンテナ選びで失敗したくないのなら信頼できるアンテナ設置業者に依頼するのが一番です。
口コミを調べて評判の良い業者をいくつか選び、見積もりを出してもらいましょう。
きちんと利得を知っていれば賢いアンテナ選びに役立てることができるでしょう。
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